14/05/03 SHIGEさんちのソーラーシステム
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「SHIGEさんがソーラー付けたいって言ってるんだけど、、、」
近所の友人(脱東電して中古のパネル2枚で暮らしている)から相談を受けたのは、去年のいつ頃だったか。「SHIGEさん」は、この友人宅での呑み会で何度か 会ったことのある、超酒好きの職人さん。うちやこの友人宅のソーラーシステムを見て、ぜひ自分ちも導入したい、ということらしい。

仕事としてやってほしい、とのことだったが、うちは商売でやっているわけじゃないし、そもそもひとんちにソーラー付けてる暇があるなら自分ちの家づくりを少しでも進 めたい。でも、独立系のソーラーを導入したいという心意気はできるかぎり応援したいし、自分でできること(架台やバッテリーボックスの準備)はやるから、、、 ということで、結局請け負うことになってしまったのだが、、、

結果として、、、
私自身は、いろんな意味で、とても勉強になりました。
ほんとに、やってよかった。SHIGEさん、奥様、ありがとう!!!



パネルは、190Wを4枚にするか5枚にするか迷ったが、うちよりも日照条件が悪そうなことを考えて5枚にした。

予算は約40万円(確か除雪機を買うのをやめたから、とのことだった気がするが、もしかして今年の雪で後悔した?)ということで、システムを設計。

今はパネルもチャーコンも安くなったので、40万円あれば、うちのメインシステム(約800W)ぐらいの規模なら楽勝で組めるはず。

機器の主な購入先は、一昨年、脱東電した友人宅に220Wシステムを設置した際にもお世話になった蓄電システム.com

まず、いちばん選択肢の少ないバッテリーの構成を決める(EB160×4個を直列につないで48Vシステムとする)。
パネルは、190Wを5枚にした。予算をかなりオーバーするかな、、、?


実は独立系システムのネックはバッテリー。寿命をなるべく延ばすには、「開放型」を「並列なし」でつなぐのがベストらしい。



パネルの電圧から、チャージコントローラを選定。
インバータは、中国製なら安いけど、信頼性重視でうちと同じDENRYOの正弦波インバータを選択。

機器構成に問題がないか、蓄電システムのO本さんにチェックをお願いした後、注文を入れた。

というわけで、機器構成は右のとおり。

<SHIGEさんちのソーラーシステム構成>

- バッテリー G&Yu EB-160×4

- パネル 190W AT-MA190A×5

- コントローラ eTracer ET3415

- インバータ DENRYO SK1500-148


到着した機器は、うちに置き場がないのでとりあえずSHIGEさんちに搬入。パネルの架台が完成するのを待って、いよいよ設置の日。

「臨時の電気屋さんはたいへんだ、、、」とぼやきながら、電気工事の部品や道具をかき集め、SHIGEさんちへ。


「いつも(仕事のとき?)よりちゃんと作った」と
SHIGEさんが自慢する単管の架台。→




 
例の友人(実は大工さん)も、もちろん助っ人に呼ばれている。
単管のとおりを直しながら、パネルを並べて、、、




、、、サドルバンドで架台に固定。→



最近市内のあちこちで見られる「森の木を皆伐してソーラーパネルを並べた」醜悪な風景に比べて、畑の奥に並んだ5枚のパネルは可愛くていい感じ。

右に見えるのが住居。左は作業小屋。




パネル以外の機器は住居のほうに置くので、
配線は地中に埋めた管の中に。→

パネルからの配線は、玄関前のデッキの下を通り、ドアの横を上がって(→)、玄関を入ってすぐの下駄箱の上に設置したチャージコントローラ(↓左)へ。

チャーコンから、また壁の外へ出し、デッキの下(←)を通って、ドアの反対側にあるバッテリーボックス(↓右)へ。

バッテリーから、またまたデッキの下を通って、もう一度玄関に入り、インバータへ。

、、、という、ちょっと行ったり来たりの配線になっちゃったけど、バッテリー4個の置き場所に制約があったので仕方ないか。


←玄関に設置したチャージコントローラとインバータ。

スタイロのボックスは、SHIGEさん作。→

SHIGEさんは、「もう少し節電すれば、これで全部まかなえるんじゃないかと思うんだけど、、、」と言うが、今のままではちょっと無理。ソーラーで使用する電気製品を限定して、なくなったら商用電源に切り替える、という作戦にするのがいちばん無難かも。
M氏は配線作業、SHIGEさんと大工の友人はパネルの影になる枝を落としている間、私は奥様と家の中の家電をひとつひとつチェックすることにした。



まず、毎月の電気使用量を見せてもらう(ここ何年分かの分をきちんとまとめてあった)。
「以前に比べたら、電気料金はかなり減ったんです。周りの人に言うと、びっくりされるぐらい、、、」と奥様。

凍結防止ヒーターのせいもあり季節によってかなりの差があるが、とりあえず先月(4月)の使用量を見てみると、288kWhだった。
電気のことはまったくわからない、という奥様に、まずWh(ワット時)の説明を試みる。
「たとえば、60Wの電球を1時間つけると、60Wh(ワット時)という量の電気を使います。このテレビを1時間見るとだいたい75Wh。そういうのが積み重なって、ひと月に288000Wh、1日にすると、30で割って、9600Whの電気を使ってるわけです」
「テレビって、見てなくてもついてることが多いんですよねー」
「何時間ぐらいつけてますか?」
「うーん、朝起きてまずテレビをつけるし、、、」 計算すると、多い日は9時間ぐらい。
「消費電力75Wって書いてあるので、75×9=675Whですね。これで1日の使用量の7%です」
「そんなに、、、」
「ほかの電気製品も見てみましょうか。あっ、ホットカーペットがありますけど、、、」
「ほとんど使わないんですけど、冬に猫のために使うことがあって、、、」
「これ、500Wなので、1時間使うと500Whです。電気を熱にするものはたくさん使うんです。ドライヤーとか使いますか?」
「ドライヤーは絶対必要なんです。髪がまとまらないし、、、」
「これ、1200Wだから、、、3分使うと、このLED電球(12W)5時間分ですね」
「えっ、ほんとですか、、、」

次に台所に移動する。冷蔵庫は、400L超クラスだが新しいもので、うちの冷蔵庫(88L)と同じ電気しか使わないことがわかっている。
ご飯は電気炊飯器で、しかもずっと保温しているとのこと。
「これも結構使いますよ。ご飯、鍋で炊くとおいしいですよ」
「難しいでしょう? なんだか失敗するのが怖くて、、、」
「何度かやれば、誰でもできますよ。それに保温しておくより、温めなおしたほうがおいしくないですか?」
「あ、そういえば、このガスコンロで自動で使える炊飯鍋が付いてたかも、、、」
「使いましょう!」

ひとつひとつチェックしていくと、「絶対必要なもの」と「実は使わなくても済むもの」が見えてくる。
洗濯機は使わないわけにはいかないけど、トイレの暖房便座はなくてもすむかも、、、

そうこうしているうちに暗くなって、今日の作業は終了。足りない部品もあって、明日また出直すことに、、、

さて次の日。
奥様は開口一番「今朝は10分しかテレビ見ませんでした!」とにこにこしている。

早速バッテリーの配線を完成させて、充電開始!







チャージコントローラに表示される発電量が、雲や木陰など日照条件によって刻々と変わる。SHIGEさんと大工の友人は、パネルに落ちる木影が気になって、さらなる伐採を試みる。

その間、M氏は商用電源とソーラーを切り替える三路スイッチの設置。結局、当面の間、「居間」と「寝室」の電気をソーラーでまかなうことにした。バッテリー残量が少なくなったときのために、それぞれの部屋ごとに、三路スイッチで商用電源に切り替えられるようにする。



清里から見学に来た友人夫妻も交えて、みんなでお昼を食べに行った後、昼過ぎには作業が終わって、おやつの前に帰れるはずだったのだが、、、

通電テスト中に、居間のテレビをつけると、インバータのファンが回り始めた。
ん?ほかに電気使ってないはずなのに、テレビだけでそんなに使うの?、、、と、簡易電力計を付けてみると、だいたい75Wぐらいの表示。75Wじゃファンは回らないはず。
知らずに使われている電気があると問題なので、あちこち調べてみると、、、

犯人はBDレコーダー(要するにビデオデッキみたいなもの)だった。簡易電力計を付けてみると、待機電力がなんと35W!。×24時間だと 840Wh で、1日の使用量の1割近い。
本体に「エコモード」というスイッチがあったのでONにしてみたが、表示は変わらない。マニュアルを調べてみると、本体の設定メニューで、「エコモード」 スイッチを有効にする必要があるらしい。四苦八苦して設定を完了すると、待機電力が 4W になった! うーん、自分たちと無縁な家電なので、盲点だったなぁ。

「いままで無駄に消費してたってわけですね」
「車が買えましたね、、、」とSHIGEさん。
まあ車は無理ですが、お酒なら結構買えたかも。

ついでにテレビのほうも、明るさを少し暗く設定しなおすと、消費電力50Wを切った。


結局、おやつをごちそうになってから解散。
「電気、まだまだ減らせると思うんです。昨夜は、ご飯も鍋で炊いてましたし、、、」
「そうなんですか、、、!」

森や農地を侵食しつつある投資(=金儲け)目的のソーラーパネルは見るたびに気分が悪くなるし、売電価格保障のもとに何年で「元が取れる」という家庭用ソーラーの売り文句も耳障りだけれど、SHIGEさんちみたいなソーラーシステムなら応援したい、と思った。

最近、メガソーラーへの嫌悪感から、太陽光発電全般へのバッシングをよく耳にする。メガソーラーについてはまったく同じ気持ちだが、私は誰にも騙されたくないし騙したくもないので、できるかぎり自分で情報を集めて、自分で考えて、自分で判断したいと思っている。
たとえば、ソーラー発電というシステム自体が原子力発電(これはシステム自体に問題が大あり)と同じような悪の権化として全否定されるべきものなのか、メ ガソーラーを推進している人たち全員がほんとうに利権にまみれた金の亡者なのか、ソーラーパネルはほんとうに10年20年でゴミになるのか、そしてそのゴ ミ ― 主としてアルミの枠とガラス、そしてレアメタルとは言えないシリコン(レアメタルを使うタイプのパネルは市場の1割) ― は10万年後も近寄ることのできない核廃棄物と同じレベルで論じられるべきものなのか、、、

ソーラーパネルとはまったく違うものだが、一時期ブームだった太陽熱温水器が最近屋根の上でゴミになっていることが多いのは、決 してそのシステム自体が悪かったわけではない (「太陽熱」は、発電と違って誰にでも簡単に利用できるシンプルなエネルギーであり、もっともっと利用されるべきだと思う)。強引な勧誘と不適切な設置、 売りっぱなしでメンテナンスもしない一部の業者の罪は大きいけれど、「元が取れる」からと言われて、その仕組みもよく理解しないまま、付けてもらっただけ で後は知らない、という使用者にまったく責任がないとは言えないのではないかと思う。

「食」も「住」も「エネルギー」も「医療」も、「ひとまかせ」にしてしまったことで失ったものは計り知れないぐらい大きい。そういう意味で、電気エネル ギーの一部でも「ひとまかせ」から脱却しようとすることで、SHIGEさんが自分の手に取り戻したものは、これまた計り知れないぐらい大きいんじゃないか、とい う気がする。結局予算は2割近くオーバーしちゃいましたが、、、

後日、SHIGEさんから届いたメール。
「ソーラーは元気に働いています。天気の良い昼間は冷蔵庫を動かしたり、洗濯機を動かしたりしています。
何よりも、テレビを見なくなりましたし、今まで以上に、電気を使うことに消極的になりました、、、」

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