「ツール・ド・大秘境 2008」レポート                      〜チーム「ランタンルージュ」の巻〜 ◆8月某日◆ 今年は開催するという噂のあった大秘境の日程が決まったらしい。 待ってましたと、即レギュレーション請求。 ◆9月某日◆ 今年こそは念願のレディースチームが組めるかも。 目星をつけたメンバーに参加の打診、全員から快諾を得る。 (大秘境へのお誘いメール)----------------------- 、、、11月末、長野、しかも夕方スタート朝ゴール、という かなり頭の悪いイベントですが、身体能力だけでなく「人間」というか そのひとの持つ総合的な力が試される局面が多いので、きっと面白いと思う。 ぜひ前向きにご検討ください。よろしくね。 (あるメンバーからの返信)----------------------- お誘いありがとうございます。頭の悪いレース大好きです、、、 さて、わがチームのメンバーは、、、 『みほちゃん』 トライアルライダー(エンジン付きのほう)だけあって、バランス感覚抜群、 下りなら相当なところでもバンバン下っていく。 本人の弁では、体力、持久力がちょっと不安なり。 『こがちゃん』 現役きこり(?)だけあって、体力はばっちし。度胸もOK。 激坂が下れないと悔しがるが、これでちゃりに乗り始めて数ヶ月とは、、、 末恐ろしい若手メンバー。 『くまちゃん』 冬はスキーのインストラクター、夏は山のツアーガイド、とくれば、 地図読みはOK。現地の地理にも明るいらしい。 最近アドベンチャーレースのシリーズにも参戦。 ちゃりの下りはちょっと苦手っぽい。 そして私、『がくらんばんちょ』 過去の大秘境シリーズすべてに参戦。ちゃり歴の長さだけはぶっちぎりでいちばん。 元バイク乗りで、「表」「裏」の各種レース&ラリーへの参加歴あり。 経験だけは豊富。悪条件、逆境にはやたら強い。 得意技は、気合いと根性でアドレナリンを放出し、すべてを解決すること。 さて、どんなレースになることやら。楽しみ〜 ◆10月◆ 大秘境のためのトレーニングと称して、毎週末の山サイ。 天城八丁池、南大菩薩、雁坂峠、富士山、浜石岳、、、 遊びすぎて、準備はあまりはかどっていない。 ◆11月◆ 第1週の週末に「大秘境合宿」を企画。 土曜日の夜に、軽くナイトランして、日曜は長野へ。 「黒姫クラシック」のルートをみんなで走ろう、という企画。 当日、最近笹ヶ峰付近でMTBが歓迎されないという情報を得て、 急遽、清文さんの携帯にTEL。 「今日、黒姫クラシック走ろうと思って来たんですけど、、、」 「困るなぁ、そんなことされちゃ。まあでも、そこは今回使わないからいいや」 笹ヶ峰はやっぱり行かないほうがいいらしい、ということでショートカット。 しかし、人数が多いこともあるが、このメンバーだとちっとも行程が はかどらないのは毎度のこと。登りのセクションをいちいちトライしたり、 泥沼につっこんで遊んだり、、、ゴールは夕方に近くなった。 黒姫クラシックはともかく、ナイトランテストではいろいろと収穫があった。 まず、夜中にヘッドライトの明かりでは、地図が(等高線はおろか、道まで) まったく読めないことが判明(はい、つまり老眼というやつですね)。 あとは、ヘッドライトが暗い(というか他のメンバーのが明るすぎる!)ことと、 ナビまわり(GPS、コンパス、マップケース)の装着方法に 再検討が必要なことがわかった。 レースまで1ヶ月を切り、装備品はだいたいOKだが、 サポートカー関係の準備(スタッドレスタイヤ、サイクルキャリアなど)が 遅れている。 GPSは、高感度チップ搭載の廉価版 Garmin eTrex H を海外通販にて 購入したので、まあよしとしよう。しかし、最近のGPS事情を考えると、 ほとんどのチームは地図入りの高級版を持ち込んでくるんだろうなぁ、、、 現在地がわかるって、ずるいよなぁ、、、 そうだ、老眼対策で2.5万図を拡大コピーしていくことにしたので、 それに緯度経度のメッシュを入れて対抗しよう(なんてアナログな、、、)。 ◆10日前◆ 日本列島を寒波が襲う。長野より積雪の情報。 主催者からの威嚇写真が続々と届く。 いちばんの心配はサポートカー。うちのエキスパートは四駆ではない。 ディーゼルマニュアルのFFだし、雪道にそれほど弱いわけではないと思うが、 ドライバーとなるのは私ではないし、しかも深夜にひとりでの運転となる。 果たして大丈夫なのか、、、 チーム変態パワーのしんば氏にその話をすると、 うちのチームメンバーである愛妻のことを心配したのか、 しんば家のハイエース(四駆)を貸し出すことを検討してくれたらしい。 変態パワーのメンバー、ダダーン氏に相談したら、 「いや、でも敵に塩を贈るというのも、、、」 と言われたそうな。 実は彼のパートナーもうちのチームメンバーなのだが、、、 そうか、一応「敵」だもんねぇ、、 いいよ大丈夫、うちの車でなんとかなるよ、いや、なんとかするよ。 だいじょぶ、このメンバーなら絶対、、、 ◆一週間前◆ うちのチームのメンバー全員と『変態パワー』『アブトヤパロフ』の 一部メンバーが八ヶ岳近辺に走りに来るが、 わたしはサイクルキャリアの製作があって参加できず。 ま、正確に言うと、製作するのはわたしではなくM氏ですが、、、 山サイ仲間から譲ってもらったサイクルキャリア1台分があるので、 残り3台を積むためのキャリアが必要。 元アルミ職人のM氏がためこんでいたアルミの端材は、数ヶ月前に作った 太陽光パネルの架台にほとんど使ってしまったので、 うちの小屋を建てるときにアルミの手すり材などで作ったスイートカット テーブル(合板をカットするためのもの)を加工することになった。 うちにあるちゃりを3台出してきて、これはこっち、それはあっちとレイアウト。 だいたい目処が付いたので、わたしは古いCAT EYEのちゃりライトを加工して GPSのステイを作ったり、車内に積み込むホイールのためのディスクガードを 作ってみたり、、、こういう「つくりもん」は遠い昔、ラリーなるものに 出ていた頃以来だ。なんだか楽しい。 キャリアは無事完成し、すっかり暗くなった頃に、遊びつかれたメンバーが わが家に集合してちゃりの積み込みテスト。 小柄なメンバーもいるので、踏み台に乗り、2人ないし3人がかりで積み込む。 本番前に練習できてよかった。 ◆前日◆ 最終準備。 ハンドルまわりのナビ&照明システムがなんとか納まる。 装備の選定と荷造りがようやく終わった頃、熱が出てきた。 遠足の前の興奮のせいか、、、!? 夜、拡大コピーした2.5万図に、緯度経度30分ごとのメッシュを入れる。 ◆当日 受付◆ 変態パワーのメンバーN田氏と、エキスパートで長野へ。 集合場所に一番乗りして、昼食用に買ったパンを食べようとすると同時に 猛烈な胃痛に襲われる。うーん、あんまりこんなことはないのだが、 緊張してるのか!? (以後、まったく食えないまま、本番突入) そうこうするうちに、ほかのメンバーも続々と到着。 なつかしい面子と挨拶を交わしながらも、やることはいっぱいある。 貸し出し品(ちゃりライト、テールライトなど)の取り付け&セッティング、 くまこ号のローター交換(優しいクラッシャー氏がやってくれた!)、 こがちゃんはカセット交換(なぜ今?)。 この忙しいときに、テールライトは反射鏡じゃなくて自光式のライト じゃないとダメだという情報が伝わってくる。 だって、前回まで反射鏡でよかったじゃん。 誰かサイリウム持ってない?と走り回り、なんとか3つ確保。 と、清文さんの姿が見えたので、反射鏡のついたシートポストを手に近づく。 「清文さん、なんかこれじゃダメってきいたんですけど、、、」 「ダメだねぇ、自分で光るやつ、付けてね」 「だって、前回までこれでよかったじゃないですかぁ、、、」 「わかったよ、いいよもう、それで」 やたっ、ゴリ押し作戦成功! ちゃり4台をなんとか積み込み、荷物を選別して積み込み、 あ、着替えもしなきゃ、、、 あとはミーティング。スケジュールの確認、ドライバーの割り当て、 エキスパートの運転についての注意点、、、 トイレに寄りつつ、結構ぎりぎりで受付場所に到着する。 すでに他のチームの車でいっぱいだったので、奥の端っこに車を停める。 これがその後の明暗(うちのチームというより他のチームの)を分けることに なるとは、、、 いちばんに受付に並ぶ。後ろに並んだ『変態パワー』のダダーン氏が、 わたしのザックに3つも付いている熊鈴を見て、 「3つもいらんやん、一個貸してよー」とねだるので、 「敵に塩は贈らないから!」と一喝しておく。 参加費を払い、資料を受け取り、装備品のチェックかな、と思ったので、 「あと、装備品は全部揃ってます!!!」と言い切ってみる。 「あ、、、はい、、、わかりました」と、気圧されるオフィシャル。 よし、気迫作戦成功! ◆プロローグラン◆ 車に戻り、まず全SSの予習。 続いてGPSポイントを入力しようと全員で車内に入ると、 なぜかうちのチームの周辺をうろうろしているような気がする清文さんが また現れて、車の窓を覗く。 「なにしてんの?」 「GPSポイントを入力しようと思って、、、」 ふと、さっきから気になっていたことをきいてみる。 「ところで、プロローグランって、何時に始まるんですか?」 清文さんの顔が一瞬緩んだ気がした。 「それはもう指示されているよ!」 「え、、、!?」 さっき読んだ資料にはなかったはずだけど、、、あ、チェックカードだ! あわててチェックすると、なんとスタートタイムの欄に「16:07」! えっ今何時だっけ? そういう作戦かー、やられた、、、 急いでみんなに説明し、大慌てで出発準備を始めると、清文さんがひと言。 「静かにしなさい!」 「は?」 「だから、静かに! 今気づいているのは、君たちだけだ、、、」 「、、、はい」 そういうことね。 なるべく静かに準備をしつつ、くまちゃんにルートの確認をお願いし、 ほかの3人は急いでGPSポイントを入力。 と、地図を見ていたくまちゃんが、 「これって、GPS要らないかも、うん、要らないよ、まっすぐ行くだけだもん」 どうも、奥社への参道を行けばいいらしい。 しかも参道の入り口はうちの車があるすぐ横だ。 ふと気がつけば、オフィシャルが2、3人、すでに立っている。 あの、どうすれば、、、と目できくと、 「どうぞ、このままスタートしてください」 なるべくそっと、そっと、走り出した、、、つもりだったが、 りん、りん、からん、ころん、りん、しゃらん、りん、、、と鳴り響く熊鈴×7個。 しまった、、、これじゃ誰か気がついたかも。 4人揃ってトイレに行く振り、、、してもダメかな。 参道は緩やかだが、先週からの雪が踏み固められて、かなり歩きにくい。 普通の格好の参拝客が、危なっかしい足取りながらも一応戻ってくるので、 まあこの先も大丈夫なんだろう。 参拝客の不審そうな目つきを「こんにちはー」とにこやかにかわしながら先を急ぐ。 元気なこがちゃんに先行してもらい、わたしとみほちゃんは歩きながら 一応GPSポイントを入力する。 1つめのCP(看板)を見つけた後、後ろからヘッドライトが、、、 やはり追いつかれたか。でも、2チームに抜かれた後は、誰も来ない。 さては、あとのチームはまったく気づいてないのか。 参道の最後は階段。しかも半分凍ってる。 あのおばさんたちは、これを行ったの? ホントに? 階段の上では先行のチームがポイントを探している。 CPに用意されたシールをチェックカードに貼るという前回までの方式ではなく、 今回は、配布される資料にCPの写真が掲載され、 その一部が穴あきになっていて、その部分の文字をチェックカードに記入する という方式がとられている。 つまりうちが主催するGPSラリー、HSGRと基本的には同じ方式だ。 (シールの設置、回収という手間が大変なので、うちでは最初からこの方式) 写真入りというところが、文字だけ(しかも手書き)のHSGRとは、 格が違う感じだが、、、 写真と照合しながらCPの場所を確定して、答えを記入した後、 踏み固められた雪の階段を慎重に、でも急いで下る。 下りなら任せて、というみほちゃんが駆け下りて行く。 1つめのCPまで戻ったあたりで、やっと残りのチームが登ってきた。 「やられたー」「なんで教えてくれへんの!」 非難の声を聞き流しながら、駐車場へ。 次のステージの準備をせねば、、、 ◆SS1◆ MTB3人 体力40% パンチ40% 頭脳20% 車の上からちゃりを下ろし、寒いのでトイレの中へ避難してGPSポイントを 入力する。入力し終わったあと、あらためて地図を見ると、、、 むむむ!!! なんと、これは、、、、 こないだ合宿で行ったルートじゃないか、、、!! 清文さんの言葉を鵜呑みにして、このあたりは地形図のコピーもない。 ルートはだいたいわかってるけど、、、しかし、、、 遊びながらとはいえ、先日の合宿でほぼ1日かかったこのルート。 この闇の中、そしてこの雪の中を行くと、いったい何時間かかるんだろうか、、、 ま、とりあえず行ってみるしかない。 地図を見ると、林道を登りきった分岐にCP1、大ダルミのあたりにCP2、 そして鉄塔道から川に向って下りる途中にCP3があり、ゴールは河岸だ。 CP3とゴールのポイントまでのルートにいまいち自信がなかったので、 「敵」に相談してみることにする。 「あのさあ」 とありったけの笑顔で『変態パワー』のチームリーダーに近づく。 「なんだよー」 「君の奥さんが遭難しちゃうといけないから、ちょっと教えてよ、、、」 「えっ、なに?」 、、、彼の顔が急に真剣になった。やたっ、情に訴える作戦成功! みんなで2.5万図とつき合わせているうちに、だいたいの位置がわかった。 ドライバーのくまちゃんが道路地図を持ってきて、ゴールまでの道を確認。 「たぶんゴール地点は車が何台かとまれる場所になってるはずだから、  わかると思うんだけど、、、」 他のチームのひとが、隣で山と高原地図を広げて見ている。 「この地図には、駐車3台って書いてありますね」 「えっ、どこですか?」 こちらは「敵」という意識はないらしく、すんなりと地図を見せてくれた。 そうだよねぇ、やっぱ協力しなきゃ、、、 スタート時間が迫る。 あたりはすでに真っ暗。気温もかなり下がってきたようだ。 散らかした車内の片づけをくまちゃんに任せ、SS1のスタート。 「いってらっしゃーい」と見送られた瞬間、 こがちゃんがお腹がすいて死にそうだというので、いきなり車に戻る。 どうも燃費が極端に悪いらしく、常に補給の必要があるようだ。 「じゃ、行ってくるねー」 寒い舗装路を走ってから林道に入ると、轍には雪がなく、意外に走れる。 後続のチームが追いついてきた。『変態パワー』だ。 「意外に走れるねー」すぐに見えなくなった。 登山道との分岐のあたりまで来ると、雪がかなり深くなってきた。 この先はもう乗れそうにない。踏み跡のあるほうを、ちゃりを押しながら進む。 しばらく行くと、前方にちゃりが3台寝ている!? 「な、なんだぁ、、、?」 そっか、ここから歩きでピストンっていう作戦か、、、 しかし、見切りが早いなぁ。 ------ この時点で早々とちゃりを捨て、歩いて、というか走ってCP1、2を 取りに行く作戦に切り換えたのは、おそらくトップの『ザンジバル』。 結果的には彼らが正しかったし、ちゃりでの突破をあきらめず、 CP2のすぐ下までちゃりを担ぎ上げたチーム『変態パワー』は、 結局このときの遅れを最後まで取り戻すことができなかった。 でもしかし、、、 漕ぎ力で勝てるはずのないトップチームに勝つには、なんとしても ここを突破するしかない、という作戦上の理由もあるけど、 なにより、ちゃりで行けるところまでは行く、っていうのが、 意識の下にインプットされてるんじゃないかなー。 うちのチームもそうかも。やっぱ、バカばっかり、、、? ------ このあたり、登山道と林道(というか林業の作業道)が何度も交錯する。 先行チームの踏み跡が二手に分かれている。なるべく歩きやすいほうを 選んで、ちゃりを押していく。 『関西負けず嫌い』の面々がちゃりを引きずって追い付いてきた。 こうぞうくんとえづれ氏は元気だが、 のぐち社長がかなりつらそうで、遅れがちになってる。 急な登りの手前で、チーム『アブトヤパロフ』にも追いつかれた。。 「あれっ、ちゃりは?」 「捨てたった。もう無理やで、これは、、、」と辻ぼん。 「そっかー、、、」 さて、どうしっか、、、3人で地図を広げて作戦会議。 ちゃりを捨てたチームは、ここから歩いてCP1とCP2を取り、 引き返して舗装路でゴールのほうまで行って、CP3を取る、 という作戦らしい。舗装路のルートはわかるのか? あ、2.5万図の原本を持ってきてる。ちょっと待って。 うーん、こうぐるっとまわるのか。かなり遠いねぇ。 そしてCP3は、、、ゴールから登り返す?  それとも、スキー場から林道を走って、鉄塔道を下りる? いずれにしても、大変そうだ。 じゃ、このままちゃりを担ぎ上げて突破できるのか? 先行チームがいるなら、踏み跡はあるはず、、、 少なくとも『変態パワー』は絶対行くよね。それなら、、、 ----- チームの非力さを考えれば、ちゃりを捨てるのが正解、、、 だったんだろうね、たぶん。 でもね、行けるところまでは行きたかったのさ、、、バカだから、、、 ----- 雪はだんだん深くなる。坂も急になり、押せないので担ぐしかない。 「体力には自信あり」のこがちゃんはともかく、 「体力、持久力ナシ」と豪語(?)してたみほちゃんも、 黙々とちゃりを担いで登ってくる。 小柄なみほちゃんには、この踏み跡の歩幅はかなり大変なはずなのに、、、 大秘境に向けて毎週のように山に通って、数ヶ月前とは別人のように なっているのを私は知ってる。 少しでも楽になれば、と踏み跡を増やしながら進む。 このメンバーなら、もしかして、、、 やっとCP1にたどりつく。 問題にある看板は、同じものがこの下にもいくつかあったので、 答えはもうわかっている。「竹細工の森」、だよね。 よしっ、チェックカード、チェックカード、、、、 ない、、、!? マップケースに入れたのは、絶対確かなんだよね。 もう一度よく探して、、、やっぱり、ない、、、 あっ、さっき作戦会議したときだ。 2.5万図を出したときに、一緒に落ちちゃったんだ。 それしか考えられない、、、 「ごめんっ、、、」面目ない。 SS1でチェックカードを持ってるこがちゃんに、何度も 落とさないでね、って言っといて、なんと自分が、、、 チェックカードの紛失は、確か失格にはならなかったはず。 気を取り直して、先に進むしかない。 CP2までは約1km。ちゃりを押しながら、ひたすら歩く。 そのうち、先行チームが引き返してきた。 「まだ行く気なの? ご苦労さん」 チーム『アブトヤパロフ』が引き返してきたので、 もし帰り道でチェックカードを見つけたら、 ゴールでくまちゃんに渡してもらうようお願いする。 GPSによれば、CP2まであと700m。確かこの先はそれほど 急な登りじゃなかったはず。しかし、雪はさらに深くなっていく。 またすれ違ったチームが、 「CP2より先は行けないよ。踏み跡なんかないよ。」 え、そんなはずは、、、だって『変態パワー』は行ってるはず、、、 きっと、踏み跡を見失っただけだよね、と信じて先を急ぐ。 あれ、前方にライトが、、、えっ、ちゃりが引き返してきた!!! なんと『変態パワー』だ! なんてっこった!!! 実は彼らはトップチームが早々とちゃりを捨てたことを知らなかった。 (登山道と林道が何度も交錯するところで違うルートを行ったため) ちゃりで先行していると信じていたトップチームが走って戻ってくるのを見て、 リーダーしんば氏の心の中で何かがポキリと折れたらしい。 CP2より先は膝上ラッセル。踏み跡はもちろんない。 しかも、チームメンバーのクラッシャー氏が風邪でヨレヨレ。 (あんなに弱弱なクラッシャーを見たのは、闇ラリー「エンシューナダ」で スタート直後に吹っ飛んで、鎖骨を折ったとき以来だ、、、) 「そっかー、、、、」私の中でも何かがポキリと折れた。 もちろん、『変態パワー』が戻ってきた以上、踏み跡もないCP2より先を うちのチームだけで突破するのは無理、、、というか無謀だ。 ちゃりを捨てて歩き出したが、身軽になってスピードアップした他の2人に ついて行けない。 さっきから何か食べなきゃ、と思うのだが、みかんジュース以外のものを 身体が受け付けない。これって、ちょっとやばいかな、、、 ちゃりを捨てた途端、心の支えがなくなったような感じ。 高所恐怖症のえづれ氏が、空身だと橋の欄干に近寄れないのに、 ちゃりかバイクのハンドルを握っていれば欄干から下を覗ける、 っていうのとおんなじ?(ちょっと違うかも、、、) やっとのことでCP2に到着して、看板の文字を書き取り、引き返す。 道は下りになったが、相変わらず調子はよくない。 なんとかカロリーを補給しようと塩キャラメルを口に入れたが、 どうしても食べられない。とうとう吐き出してしまった。 あー、疲労で遭難するひとって、こんな感じなのねー、、、 と、頭はまだまだ冷静だ。 ふらつきながら、ちゃりのところまでたどりつく。 少し前から降り出した雪で、マップケースが白くなっている。 ハンドルを手にした瞬間、なんだか少しだけ身体に力が戻った気がする。 ちゃりをひきずりながら、歩きにくいトレースをたどるうちに、 少しずつ元気が出てきた。 CP1を過ぎて、傾斜が急になってきた。 もしかして、乗れたりしないかな、、、? ちゃりにまたがってみる。 ペダルに乗ってしまうと、フロントが雪にもぐって、前に進まない。 足で蹴ってみると、何とか進む。これって、一応、乗ってる、、、? こがちゃんとみほちゃんもまねして乗ってみているらしく、 後ろからきゃあきゃあと嬌声(?)がきこえてくるが、 気を抜くとフロントが刺さるので、振り返る余裕はない。 ちゃりをひきずって走り下ったほうが早いのはわかっているが、 足を温存するという名目で、しつこく乗るっているうちに、 すっかり元気になってきた。 そろそろ、行きに作戦会議をしたあたりだ。 林道を押してきて、右に曲がって登山道に入ったんだから、、、 そう、このあたり。ほら雪にちゃりを立てた跡がここにあるから、、、 「あったー!!!」 雪に埋もれかけていたチェックカードを見つけたのは、 やっぱり、探し物大得意のみほちゃんだった。 あー、よかった、、、さらに元気が出た。 林道を降りきった頃、雪が雨に変わり始めた。 舗装路に出て、ゴールの方角を目指す。 時間的にCP3はあきらめるしかないだろう。 駅のほうまで出ればわかりやすい道があるが、遠回りになる。 確かショートカットしてスキー場に出られる道があるはずなんだけど、、、 こがちゃんの地図入りGPS(結局大秘境直前に購入したらしい)で 現在地を確認しながら、道を探す。 この地図入りGPS、確かに今どこにいるのかわかるのは便利だが、 あの小さい画面に入る情報は限られているし、全体像はつかみにくい。 「2.5万図がないと使えないよ」とN田氏が言ってた意味が よくわかった。 途中、ゴールで待っているくまちゃんに電話を入れ、状況を伝える。 くまちゃん、待たせてごめんね。もう少しで着くから、、、 とは言っても、深夜、雨の中でのルートファインディングはむずかしい。 マップケースの水滴を何度もぬぐいながら、地図を確認する。 ゴールの方角に向って北上していると、未舗装路になった。 たぶんこれを行けばスキー場に着くと思われるが、迷った末、 舗装路を行くことにする。昼間なら、このまま行くんだけど、、、 県境の橋まで来た。ここを左折すれば、ゴールまであとわずか。 、、、のはずだったが、最後の数百メートルがコンクリート舗装の急坂! 疲れきった身体に、この坂はこたえる。ここは気合しかない。 「ファイトォ!」 なぜか突然、体育会系になる私。ノリのいいこがちゃんが付き合ってくれた。 「ファイっ、トォ!」「ふぁい、とぉー」 やっと明かりが見えた、、、 待ちくたびれたはずのくまちゃんが、笑顔で迎えてくれる。 あったかいココアが嬉しい。 「遅くなって、すみませーん、、、」 凍るような雨の中待っていてくれたオフィシャルに、救い出された チェックカードを渡す。 「申し訳ありませんが、SS2は30分前にクローズしました」 SS3はステージ自体がキャンセルされたので、 このままSS4のスタートに向ってくれとのこと。 雨の中、みんなでちゃりをルーフキャリアに積み込み、 くまちゃんのナビでSS4に向う。 こがちゃんとみほちゃんは後席で次のステージのGPSポイントを入力。 私のGPSにも、みほちゃんに頼んで入力してもらう。 eTrex H は廉価版だけのことはあって、入力操作はかったるい。 「左上のボタンを押して数字を選んで、左下のボタンを2回押して、、、 あ、この信号まっすぐだよね、、、」 運転しながらGPSを頭に浮かべて指示すると、勘のいいみほちゃんが すぐにのみこんで、ポイントを入力してくれた。 ◆SS4◆ MTB3人 体力60% 頭脳40% パンチ10% 車内での相談の末、次のステージは、みほちゃんがドライバーとして 残ることになった。 ---------- 実はこのステージ、スタートとゴールが同じなので、ほんとうは ドライバーは必要なかった。 もしこの時点で、このステージが夜明けまでかかる、つまり実質上 最後のステージとなることがわかっていたら、 全員で行くという選択肢もあったのだが、、、 みほちゃん、ごめん、、、 ---------- スタート地点に着くと、とっくにスタートしていると思っていたほかの チームがまだスタートし始めたばかりのようだ。 時間調整のため、レストタイムに余裕があったらしい。 『変態パワー』はうどんまで作ったようで、若干元気になったらしい クラッシャー氏が「うどんあるよー」とすすめてくれた。 お腹がすいて死にそうなこがちゃんが、さっそく食べに行った。 最後尾のわがチームにはまったく余裕がなく、スタートは20分後。 ちゃりをキャリアから降ろして走れるようにするだけでも10分近くはかかる。 くまちゃんのちゃりにマップケースを取り付け、GPSはみほちゃんのを 借りることにする。 さて、「簡単、簡単、コース見つければね」というこのステージ、 たぶんルート設定とナビゲーションが鍵になるんだろうと思われる。 どういう「一筆書き」を描けば、いちばん効率よくポイントを取れるか。 というか、主催者が考えている「正解ルート」をどう見抜くか。 前回の大秘境のときは、2.5万図を見て、その意味はわかるにしても、 等高線から地形を頭に描いたり、どういうライン取りならちゃりでも行けるか を判断したり、というようなことができていたとは言い難い。 去年、今年と2回のGPSラリーを主催して、そのあたりはずいぶん進歩した と自分でも思う。特に、主催者の目で見られるようになったのは大きい。 主催者としては、エントラントに何とか正解ルートを見つけてほしいと思う。 たぶん清文さんも、ヒントを散りばめながらポイントを設定しているはず、、、 スタート時間はもう過ぎているし、早く出発すべきなのはわかっているが、 ここで方針を間違えるほうが、結局タイムロスになるはずだ、と信じて、 資料の地図にあるポイントを2.5万図のコピーに書き写す。 主催者の気持ちを考えながら、たぶんこれだろう、というルートができた。 まず舗装路を南下してCP6を取り、 そのまま尾根沿いに登って三登山山頂のCP3を取る。 そのあと、等高線によればちょっと急な(たぶんちゃりで下れば面白そうな) 下りで林道におりて、トラバース気味の林道を北東に向かい、 髻山方面の3つのCPを取る。 あとはさっきの林道を南西方向に戻りつつ、林道沿いにある2つのCPを取り、 最後は舗装路を北上してゴールに戻ってくる。 問題は2つある。 ひとつは、三登山への登り下りを、この闇の中、このメンバーでこなせるかどうか。 特に下り。私にとっては「下ってみてぇ、、、」という感じの地形だが、 他の2人のメンバーが果たして乗れるのか、、、 くまちゃんに地図を見せると、 「うーん、この等高線じゃ、私は結構たいへんかも、、、」 となると、三登山のCPはあきらめて、北側にある道(2.5万図では 1本線だが、道路地図を見ると舗装路らしい)を通って髻山方面に向うか、、、 もうひとつは、最後の舗装路。地図では、標高差でざっと200m近い峠を 越える九十九折れの道が続いている。そこには「坂中峠」の文字が、、、 「坂中」って言えば、清文さんのお店の面子がトレーニングに使っている 場所じゃなかったっけ、、、最後にこの峠を越える元気があるのか、、、 ほかのチームはすでにスタートして、あたりは閑散としてきた。 清文さんが近づいてきたので、急いで情報ゲットモードに入る。 「三登山からの下りって、面白そうだけど、結構きついのかなぁ、、、」 (地図を手に、ひとりごとをつぶやくふりをしてみる) 「、、、うーん、面白いんじゃない、、、かなぁ」 (なぜか清文さんもひとりごとモード) 「でも、このルート取ると、最後の峠越えがかなりしんどそうだなぁ、、、」 (と、ひとりごとを続けるわたし) ここで、他のオフィシャルが近づいてきた。 「どうしたんですか?」 「いや、主催者として、やっぱりそんなことは教えられないよなぁ、、、」 「は?」 「○○さんがいなけりゃ、教えちゃったかもしれないけどなぁ、、、」 「あ、では、私はいなくなりますから、、、」 (と、察しよく、消える○○さん) 「そこにトンネルがあるだろっ、、、(小声で)」 えっ、トンネル? どこに? と、地図を見直すわたし。 「だから、ほらっ、そこにトンネルがっ、あるだろう!」 ??? あらぬ方向を見ながら去っていく清文さん。 視線の先を見ると、、、トンネルだ! もう一度地図を見る。そっか、地図にはないけど、トンネルが通ってるんだ! ということは、峠を越えなくてもいいってこと、、、? つまり、このルートはいい線いってるってことだ、と勝手に納得するわたし。 「とにかく、はやくスタートすれば。時間もないんだし、、、」 と清文さんが急かすので、とりあえず出発する。 みほちゃんが、こころなしか淋しそうな笑顔で見送ってくれた。 未練はあったが、結局、三登山のCPはあきらめることにする。 スタート直後、トンネルの手前を左折して、舗装路を北東に向かい、 CP1を目指す。しばらくすると集落の中を抜ける。 深夜の静寂の中、熊鈴が響き渡る。 この時間、この格好で、女3人で自転車に乗っている、、、 確かに通報されても文句は言えないぐらい怪しい。 「もし、誰かに見つかって、何か言われたらさぁ、、、」 集落を抜けながら、小声でチームメイトに話しかける。 「トレーニングだって言おうね。夜自転車で走るレースに出るから、  そのトレーニング中ってことにしよう、、、」 考えすぎかしら、、、 そろそろCP1だ。問題の写真によれば、鉄塔がポイントになっている。 舗装路からCP1の方向に折れるダートを発見。少し行ってみると、 標識があり、整備されたハイキングコースのようだ。 これを行けばCP1に行けるのか? 目の前に見える送電線は、ハイキングコースよりかなり上の尾根上にある。 「ハイキングコースからは登れない可能性もあるから、舗装路をもう少し行って  鉄塔のメンテナンス道があるかどうか見てみよう、、、」 結論から言えば、これは深読みのしすぎだった。 確かにメンテナンス道があって、そこからCP1の鉄塔に行くことはできたが、 さっきのハイキングコースをそのまま素直に行ってもCP1の目の前に出たのだ。 そっか、キーワードは「素直」なんだね。 そんなにひねくれたコースじゃないんだ、、、 じゃ、ハイキング道をそのまま行けば、次のCP5に出るんじゃない? これは甘かった。進んでいくと、CP5の方角がどんどん右にずれていく。 しまった、どこかで分岐を見落としたか? 直線距離は200mを切っている。GPSでやぶこぎしようか? でも、さっきからいくつも立っている標識には「髻山○m」とあるので、 このまま行くとCP4(髻山の山頂)にはたどりつくはず。 じゃ、CP4を取ってから、帰りにCP5を探そう。 ---------------- 少し前後するが、ハイキングコースに入って少し行ったところに、 西に向う分岐があり、標識に「三登山 ○m」の文字があった。 やっぱり三登山の頂上から、こっちに通じる道があったんだ! 最初に行こうと思ったルートが正解かも、、、 実際にたどれなかったのは悔しいが、少し嬉しくなる。 ---------------- 髻山の山頂まではかなりの標高差があるはずなのに、水平道が続く。 と思ったら、案の定、林道に出た後、急登になった。 最後はちゃりを置いて歩いて登る。 やっと山頂だ、、、何これ!? 眼下に広がるのは長野市内の夜景。 「きれいだね、、、」 「みほちゃんにも見せたかったね、、、」 問題の写真に移っている石碑の銘板のようなものを探して、ポイントゲット。 とりあえずさっきの林道まで戻ることにする。 ちゃりで下っていくと、あらぬところから、人影が3つ登ってきた。 どこから来たんだろう。しかも、ちゃりがない??? 歩いて来た? とすれば、いったいどこからピストンしてるんだろう。 「CP5から来たんですかぁ?」ときいてみると、 「おっと、それをきいちゃあ、いけないよ。  なぜならこれは、だ・い・ひ・きょ・う、、、、」 あの声は、、、トップのザンジバルだ! どっから来たんだ? ますます「???」となったが、ま、いっか、とそのまま下る。 林道に出て方角を確認すると、おおむねCP5の方向なので、とりあえず この林道を行ってみることにする。 しばらく行くと、やはりCP5の標識があった。 答えをチェックカード(今度は失くさないように厳重管理している)に 書き写し、もう一度地図を確認。どうもこのまま行けば、残りのCPがある 林道につながるようだ。 と、チーム『関西負けず嫌い』が登ってきた。 「どう? この先、きつい?」 「林道は乗れるけど、最後はやっぱり急登だねー」 林道の分岐で、今度は『アブトヤパロフ』の面々と行き会う。 にごたんとうっちぃが疲れた顔をしている。 「どしたの?」 「いや、三登山に登る道がどーしても見つからなくて、迷走してるっす」 そっか、林道から登ろうとしてるのか。 下ってみたいとは思ったけど、あの斜度を登る気はしないなぁ、、、 「この林道を行けば、CP7とCP2に行けるんだよね」 「行けますよ。こっちからだと、延々(えんっえん)と登りですけどね。  きついっすよ」 えっ、そうだっけ? 最初に地図を読んだとき、おおむね等高線沿いで、若干アップダウンのある トラバース道、と思ったんだけど、、、 だから、ここを帰り道にしたんだが、、、おかしいなぁ、見間違いか? しかし、ここまで来たんだから行くしかない。 行動食を補給し、延々登りに備えてウェアを調整し、GPSの電池を替えた。 よしっ、と気合を入れてこぎ始める。 確かに登りだが、それほど急ではないし、こぐのもそれほどつらくない。 「くまちゃんが遅れるぐらいのきつい登りかと思ったけど、そうでもないねー」 、、、っていうか、くまちゃん、先行してるし。 SS1でのダメージがあるとはいえ、むしろ遅れ気味なのはわたしだ。 こがちゃんもさすがにちょっと息が苦しそうだ。 さっきの休憩から先に出発したくまちゃんとの距離がなかなか縮まらない。 スキーでの技術をちゃりに転化するのはなかなかむづかしいらしく、 ちゃりの世界ではちょっと悪戦苦闘している感のあるくまちゃんだけど、 アドベンチャーレースのシリーズ戦でもがんばってるし、 (最初に会ったときは確か、レースなんて、あたし、とても、、、なんて 言ってた気がするが、、、) 今年のGPSラリーでは、悪天候の山岳ステージ(熊注意の看板が多数あり)も、 ちゃんとひとりで走っていたし、、、 みんな、だんだんたくましくなるんだなぁ、、、 そのうち道は下り始める。あれっ、ずっと登りのはずでは、、、??? そしてまた登り、、、下りもある、、、そして水平道、、、登り、、、 うーん、よくわからないが、きっとあまりにも寒くて、 下りの印象が強くなっちゃったんだろうか、、、 確かに長いことは長い。 やっとCP7が近づいてきた。林道から少しはずれて登ったあたりにある。 そこからCP2に抜ける道があるかもしれないので、ちゃりで登る。 これは漕いで登れる坂で、簡単に到達できた。 よし、あとはCP2だ。 林道をしばらく行くと、「山城まで500m」の看板があった。 CP2までの直線距離は300mなんだけど、、、 今度はちゃりを置いて、歩きでピストン。 あっちへ行ってはこっちへ戻る九十九折れの坂が続く。 だから500mなのか、、、 「山城」というだけあって急な坂。しかも登っても登っても頂上に着かない。 疲れた身体に、これはこたえた。3人とも無言でひたすら登る。 やっとのことで頂上。なんと、ここも見事な夜景スポットだった。 「デートコースなんだねー」と言うこがちゃんに、 「っていうか、ここまで登ってくるカップルなんていないって」 と返すくまちゃん。 確かに、デートにはきついコースだなぁ、、、とくに夜は、、、 下りも長かった。やっとちゃりまでたどりついて林道を先へ進む。 夜はいつの間にか明けている。 「なんか、明るいところを走ってるのが、変な感じ、、、」 いや、夜走るほうがよっぽど変ですから、、、 あとはゴールを目指すだけ。だが、さっきから登りが続いている。 気温も上がってきているのだろう。 「ゴールまで、確か登り基調だよね」 たまらずにカッパの上下を脱いだ。 しかし、次のコーナーを曲がると、道が下りになった。 そして舗装路までずっと下り、、、さぶっ、、、!! ちゃんと地図を確認してから脱げばよかった。 舗装路に入れば登りで暑くなるかと思いきや、山の中とは違い、 地形がひらけているので風が容赦なく吹き付ける。 ウインドストップのフリースジャケットなのでそのまま我慢して、 ゆるい登りをひたすら漕ぐ。 前を行くくまちゃんが、マップケースの地図をにらむように見ながら、 歯を食いしばって漕いでいる。 トンネルが見えた。やはり旧道の峠道の下を、新しくできたトンネルで 抜けられるらしい。 長い長いトンネルをひたすら漕ぐ。 これを抜ければ、ゴールだ。みほちゃんが待ってる、、、 ◆SS6◆ ラン4人 頭脳90% 体力10% 「お疲れ〜」 ゴールには、みほちゃんの笑顔とホットレモンが待っていた。 SS5のクローズには、やはり間に合わなかったらしい。 最後の善光寺ステージまで直接行って欲しいとのこと。 少し時間に余裕があるようだし、さすがに何かお腹にいれないとやばいので、 みほちゃんがたくさん沸かしておいてくれたお湯で、スープをつくる。 固形物はまだ食べる気がしないが、スープなら、、、2杯も飲んじゃった。 そうそうゆっくりもしていられないので、またちゃりを積み込み、 すっかり明るくなった道路を長野市内に向って下る。 SS5のゴールとなる善光寺駐車場には、すでにすべてのチームが到着していた。 急いで駐車場に入ろうとして、寸前で気がついた。 「ん? このゲート、くぐれるのか?」 入り口に「2.2m以下」の表示。ぜんぜん無理っ。 あぶなく屋根のチャリを破壊するところだった。 後続の車にあやまりながら、バックする。 「別の駐車場に行ってみまーす」 と駆けつけた清文さんに叫んで走り出す。が、次の駐車場でも拒否される。 「どこなら入れますかっ?」 結局24Hコインパーキングに入れて、急いでみんなのところへ戻る。 すでにスタートしている他のチームとすれ違う。 もう最後だからか、みんな余裕の笑顔だ。 (あとできけば、トップ争いはこの時点でも僅差だったらしいが、、、) 最後尾でスタート。善光寺の参道入り口へ向う。 座標が表示されている3つのCPはたぶん簡単に見つかるだろう。 ほかに、このステージでは、座標なしのボーナスポイントが3つある。 「このポイントは、どこにあるか知ってるよ」 善光寺に来たことがあるみほちゃんが言う。 残るは2つ。ひとつは、おそらく境内の中の石碑だ。 じゃこの「相鉄バス指定連絡所」という看板はどこに? 写真ではこの看板の横に緑のシートが移っているので、 緑色のものを見つけるたびに、みほちゃんとこがちゃんが走り出す。 どうしても先にこのポイントを見つけたいらしい。 善光寺の境内に入って、ほかのポイントはすべて見つけたが、 「相鉄バス」の看板だけはどうしても見つからない。 「見つけないと、悔しいよね」 「もうタイムは関係ないしね」 途中すれ違ったザンジバルのもうひとつのチームから、 「参道にあったよ」とヒントをもらう。 えっ、参道はあれだけ探したのに、、、 やっぱり悔しいので、4人で参道まで戻った。 なめるようにして見て歩くが、やっぱりない、、、 仕方ない、あきらめるか、、、 「あった、、、!!!」とため息のような声がきこえた。 見つけたのは、やっぱりみほちゃん。 まさか2階の屋根とは、、、やられました。 そしてグランドゴール、、、 長かった大秘境の夜が、やっと終わった、、、 ◆エピローグ◆ ゴールを待っていてくれた『変態パワー』と一緒に車を回収して、 ペンションにたどりついたら10時をすぎていた。 お風呂に入って、午後の表彰式まで2時間しかないが、さすがにみんな 疲れきっているので、それぞれの部屋のベッドに倒れこんでいる。 静まり返ったペンションの部屋で、アドレナリンが出すぎて眠れないまま、 つらつらと振り返る。 天候に恵まれて何事もなく終わった前回の大秘境とは違って、 今回は初っ端から波乱のSS、 「大秘境」らしい「大秘境」だったなー、、、 やっぱ大秘境はこうでなくっちゃ。 ふつうやらないでしょ、そこまで、、、っていう状況でも、 主催者が参加者を信じてやらせてくれる、 そして参加者も、その主催者の信頼に、 自分の持てる力を限界まで出して、ときには限界を超えて、応える。 だからやめられないんだよなぁ、、、 久しぶりに思いっきり真剣に遊んだ。 清文さん、オフィシャルのみなさん、参加チームの面々、みんなに感謝。 一緒に遊んでくれて、ありがとー。 4年後も、、、必ず、、、 最後にお知らせです。 --- 第3回HSGR(Hakushu Super Gps Rally)のお知らせ --- 春に、山梨県白州町近辺で、GPSとMTBを使ったお遊びをやります。 大秘境ほど「ぎりぎり」な感じはなく、楽しいイベントですが、 里山メインとはいえ、それなりに手ごたえのあるコースにしています。 基本的には、タイムではなく、制限時間内にゲットしたCP(点数の高低あり) のポイント合計を競います(CPを全部取った場合のみ、タイム差を換算)。 大秘境よりさらに地図読みとナビゲーションが重視されるかな。 興味のある方は、下のアドレスまでメールをいただければ、 開催の詳細が決まり次第、メールでご連絡します。 rin_hakushu@ybb.ne.jp あ、このイベントも大秘境と同じく「闇」(=underground)