「あのさあ、、、」 ある夜、友人ヨハナからいつになく暗
い声の電話が
かかってきた。「ひかちゃんがトイレットペーパーのしんを流しちゃって、、、」 つまり水洗トイレが詰まってしまったらしい。折悪しく夫もっちーは留守。
ホームセンターで買ってきた真空ポンプもワイヤー式クリーナもダメ。インターネットで水洗トイレの構造を調べ、長男たくみと深夜まで奮闘するも問題の解決
はならず。ついに翌朝、「おたすけマン」(わたし)が、さらに強力な助っ人「なおちゃん」(同居人)を連れて参上し、便器を外すという荒技に出て、無事ト
イレットペーパーのしんは回収された。なおちゃんいわく、「やってみたら意外と簡単だった」 とは言うものの「水洗トイレって普段は便利だけど、いざ壊れ
ると大変」ということが身にしみた一件だった。 その点、うちの「なんちゃってコンポストトイレ」は、レバーひとつですべてを水に流すことはできないけれど、しくみはシンプルそのもので壊れようがない。 断水でも停電でもOK。森の中にあるそのトイレは、屋根も壁もドアもあるけど、床に置いたポータブルトイレの下は、地面に深めの穴を掘っただけ。水分は地 中にしみこむし、木工事で出るおがくずを投入するので匂いはあまり気にならない。年に何度か穴掘りスコップで掘り出すが、下のほうは分解が進んでいて、か さはあまり増えない。森の中とはいえ水分の地中浸透は気になるが、一応「仮設」ということで許してもらうとして、建築中の家のトイレは(同じおがくずコン ポストだが)水分は分解して別処理するしくみになり、汲み取りもしたからできるようにする予定。 |
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ほかに”シンプル”と言えば、たとえば洗剤。ちゃんとした排水処理のし
くみがまだできてないこともあって、せっけんなども極力使わないようにしている。皿洗いはお湯のみ。食後はまず食卓に並んだお皿に七輪の余熱で沸かした洗
い湯を少しずつ注ぐ。きれいなお皿から順に指でこしこしこすって汚れをおとし、次の器にお湯をあける。最後は鍋にあけて、また指でこしこし(油汚れのない
ごはんなべなどは、井戸水につけておいてあとでたわしで洗う)。外に出て鍋の湯をそのへんに撒いたら、あらかたきれいになったお皿を台所に運び、ボールに
ためた熱めのお湯につけてすすぎ、食器かごにふせてあとは自然乾燥。じつに簡単、シンプルで、時間もかからない。難を言えば、皿を重ねてきれいな面まで汚
すことが罪悪に思えてきて、よそんちに行っても皿を重ねることがなかなかできなくなること(皿を持ったまま固まっている私を見たら事情を察して
ね、、、)。 洗濯はたらいにお湯と炭酸塩を入れてしばらくつけてから押し洗い。それでおちない汚れはせっけんで。はみがき粉もふだんは使わないし、化粧品もない。シャ ンプーもなくて固形せっけんのみ。 電気がないから当然と言えば当然だが、家電も少ない。テレビはもともとなかったが、小屋に引っ越すときに当面使えない冷蔵庫や、今後おそらく使うことはな いであろう電子レンジやオーブントースター、コーヒーメーカー、ホットプレート、こたつ、ファンヒーターなどもすべてひとに譲った。 |
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と、いくつか例をあげては見たが、身のまわりを見わたしてみれば、「シ
ンプルな暮らし」とはある意味ほど遠い気もする。つまり、何でも自分でやろうとすればするほど道具も増えるのである。 例えば暖房。電気のファンヒーターなら、コンセントにつないでスイッチを入れるだけ。これが薪ストーブとなると、薪、たきつけ、マッチはもちろんのこと、 火かき棒や煙突そうじの道具なども必要だし、薪小屋も要る。薪の調達も自力で、となれば、チェーンソー(整備工具含む)や斧なども必需品となる。 極端な話、すべてを外注に任せてしまえば、きわめてシンプルなホテル暮らしができる。すなわちそれは、どこからきたのかわからない電気を使い、どうやって つくられたのか不明なものを食べる暮らしになってしまうのだが、、、 そうでない暮らしを望む以上、乾燥中の材木や、ざるに干したバジルの葉っぱや、ジャ ム用にもらった摘果リンゴや、たきつけ用の木っ端の山や、断熱材用にためこんだ新聞紙などがとっちらかってカオスと化しているこの小屋暮らしも、ま、しか たないか、と言い訳してみたりして、、、 Small、Slow、Simpleで全3回の連載予定でしたが、もしかしたらつづく、、、 |