小屋暮らしの日々      その2 スローライフはいそがしい?                (わくわ く村しんぶん2007年9月号より)


water pump
ガチャポンプの井戸
うちに遊びに来る子供たちは
みんな井戸ポンプが大好き




小屋暮らしの朝は、まず七輪に火をおこすことから始まる。 七輪をドアの 外に出し、かんなくずや木っ端の焚きつけの上に自家製の炭を並べ、マッチで着火。敷地内の森の手入れで伐った枝や幹をドラム缶で焼いたは、 市販の炭に比 べて持ちは劣るが火付きはよいので、数分で火おこしは完了。煙が出なくなって部屋の中に入れられるようになるまで、とりあえずやかんをかけておく。ガチャ ポンプを付けた今の井戸は深さが3mほどしかないので、飲料水は今のところ道の駅や近所の友人宅からついでのときにポリタンに汲んでくる。お湯が沸く間 に、自家焙煎のコーヒー豆を挽く。比較的ちゃんとした由来の豆も、生豆で一括購入すれば安いし、「愉しい非電化」生活を推奨する藤村氏がつくった「炒り上 手」があれば、週に一度炭火で豆を炒るのも苦にはならない。微妙な味の違いがわかるほど舌が肥えているわけではないが、自家焙煎コーヒーは確かに冷めても おいしい。遠い国から来る貴重品なので、基本的に朝の1杯にとどめることにしている。
お湯が沸いたら、畑で採れた野菜のスープを火にかけ、自家製のパンをスライスする。最近は「粉」も自家製率が増えた。自分の畑で採れたライ麦や、友人の麦 刈りを手伝ったお礼にもらった小麦を、これまた友人のところの製粉機を借りて粉にする。これを、果物などから起こした天然酵母のたねと混ぜて、七輪と上乗 せ式オーブンで焼く。ずっしりと重いパンは2日くらい寝かせたほうがおいしい。スープができたら、七輪に網を乗せて、スライスしたパンをあぶりながら食べ る。パンを焼き終わっても七輪はまだ熱いので、井戸からやかんに水を汲んできて余熱で「洗い水」を沸かす。これは食器洗いに使い、残りはポットに入れてエ ネルギーを保存する。あとは、何年も種つぎしているヨーグルトに、ルバーブや果物でつくったジャムがあれば、うちの朝ごはんのフルコースがそろう。





baking bread
七輪とピーステンピを使った
パン焼き
「七輪パンと南部チャパティ」



breakfast
朝ごはんフルコース

roasting coffee beans
「炒り上手」を使って
生豆を炭火焙煎

この一見優雅な朝食も、実は日頃の「ずく」がなければなり たたない。つまり、年に何回かの炭焼き、季節ごとのジャム作り、週に一度のパン焼き、豆炒り、そ して水汲み、、、自給菜園の野良仕事まで入れると、実に膨大な労力が、ただ「暮らす」ために注ぎこまれている。でも、本来「暮らし」とはそういうものでは なかったのか、、、? 蛇口をひねれば水が出て、スイッチひとつでお湯が沸き、排泄物も一瞬でどこかに流れてしまうのがあたりまえの時代、パンだって、 ヨーグルトだって、野菜だって、スーパーで買ったほうがよっぽどはやい。けれど、稼いだ現金でまかなう便利で快適な外注の生活よりも、自分の手と足と頭を フルに使うスローな暮らしのほうがここちよいと感じる間は、この忙しいスローライフを続けたいと思う。
onbashira fete
御柱祭


lumbers from Inadani
持つべきは森林組合の友人?
「伊那谷から来た材木」
「伊那の材その後」

昔は伊豆くんだりまで
間伐に行ったりしたことも、、、
「杉の間伐@天城」
さて、うちで「スローなもの」と言えば、その筆頭はやはり 家づくり。土地の開拓と小屋づくりは別にして、その第一歩は、4年前の冬、敷地の端に生えていた 十数本のヒノキの伐採から始まった。このヒノキの丸太を2年近く乾かし、皮をむき、しらたを削り、根元を焼いてから地面に掘った5〜6尺の穴に落としこん で立てたのが2年前。「掘立の家」の着工となる「御柱祭」であった。以後、ゆっくりと少しずつ家づくりは進む。なんでそんなに時間がかかるの、と首をかし げるひともいるが、ポールビルディング(=掘っ立て)という周囲にほとんど例のない工法で、自分で考え試行錯誤しながら作業を進めていたり、材料の調達に 時間がかかったり、車が入れるところから建築場所まで全部で36段の階段を登らなければならなかったり、現地を見ればこのスローなペースも納得してもらえ るかもしれない。
たとえば材木。敷地内のヒノキはもちろん、森林組合の友人からわけてもらった「伐ったけど(採算とれずに)出せない」ヒノキ、知人の山から間伐する代わり にもらってきた杉、開拓中の友人の土地で伐倒してあげる代わりにもらった松などを製材所に持ち込んで挽いてもらう(もちろんそれだけでは足りないので、地 元の唐松を製材所で買っているが)。製材所からトラックで持ち帰った材は、おがくずをおとし、樹皮が残っているところは削り、桟積みして乾かした後、使う 場所によっては自動カンナなどで加工して、初めて使える。断熱材は、杉の樹皮などから作られたフォレストボード40mmに加えて、内側の4寸前後の断熱層 には、ホウ酸水にひたしてから乾かした新聞紙を丸めて詰める。床、壁、天井すべてに入るので、10坪の家とは言え、「断熱材」の製造にもかなりの手間がか かる予定。
hinoki trees
敷地の端に生えていた
十数本のヒノキ
「ヒノキの伐倒」
「はたらく力丸」

Uematsu Sawmill
お世話になっている
富士見町の植松製材
「製材第二弾」
「雑木と言うなかれ」


そんなこんなで、遅々として進む家づくり。材料なども作業 の進行に合わせて少しずつ購入するので、感覚的には月々のお小遣いで建てていると言えなくもな い。小屋に引っ越して家賃も光熱費もなくなったので、あとはゆっくり建てればいいやと開き直ってはいるが、期限というものが存在しないセルフビルド。ほぼ 専従の連れ合いはともかく、私の割り当ての作業は、ともすればほかの期限付きの作業(畑仕事とか、食品加工とか、イベントの主催や手伝いとか、この原稿と か!?)の犠牲になって、あとまわしにされる傾向にある。それにしても、5月の連休に張り始める予定で挽いてもらった外壁の三分板が、まだ一枚も手付かず というのはあまりにもひどいので、なんとかしなきゃと思う今日このごろなのであった、、、
小屋暮らしの日々 その1 その3

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